「不動産登記簿謄本」は法務局で発行される、土地や建物の詳細と権利関係が記載されている書類です。不動産の登記所有者と権利情報が分かりますので、相続登記をする前に入手が必要です。
「不動産登記簿謄本」とは?
不動産登記簿謄本の正式名称は「登記事項証明書」と言い、国に登記された不動産登記簿の内容をコピーして発行する証明書です。所有権や抵当権など、不動産に関する権利関係を登記されますので、不動産登記簿謄本があれば登記内容が分かります。
不動産登記簿謄本は誰でも簡単に申請できます。全国各地の法務局窓口だけでなく、オンラインでも専用のソフトを通じて申請が可能です。
不動産登記簿謄本を申請する時、「地番」もしくは「家屋番号」が必要です。都市部の場合には、「地番」と住所の住居表示とは異なりますので、法務局窓口にて備え付けのブルーマップを見て確認するか、お手元にある不動産の権利証(又は「登記識別情報通知」)に記載された「地番」もしくは「家屋番号」をご参照ください。また不動産所在地の各市区町村役場(東京都23区の場合、都税事務所)に「名寄帳」を申請して取得することで、亡くなった方がその市区町村に所有していた不動産のリストを取得することができるのですが、その名寄帳でも「地番」もしくは「家屋番号」が記載されています。
不動産登記簿謄本の内容は?
登記簿謄本は、一般的には表題部、権利部(甲区)、権利部(乙区)、共同担保目録、という4つの欄に分かれた4部構成になっています。
登記されている内容によって、表題部のみのもの、表題部と権利部(甲区)のみのもの、表題部、権利部(甲区)、権利部(乙区)のみのものと全てそろっているものがあります。
「表題部」は不動産の基本情報
登記簿謄本の表題部は、その不動産の物理的な基本情報が記録されています。土地の場合は所在や地番、地目、地積など。建物の場合は種類や構造、床面積などです。

土地の場合:所在・地番・地目(登記された用途)・地積(土地の面積)があります。土地の地目のほとんどの場合は「宅地」ですが、「農地」など特殊な用途の土地が出ましたら、相続に条件が付いている可能性がありますので、専門家にご相談ください。

一軒家の建物の場合:所在・家屋番号・建物の種類・構造・床面積などが記載されています。

マンションの一室の場合:一番下の「敷地権の表示」には、このマンションに建てられた敷地の情報も掲載されています。これは、共同住宅という性質上、「土地のみを処分する、建物のみを処分する意味がなく、セットで登記されていることが多かった」ことによるものと思われます。
マンションの登記簿謄本の内容を確認する場合には、もし建物の登記簿謄本に「敷地権の表示」があれば、ほとんどの場合にはこれのみを取得すれば足ります。
「権利部」は不動産に対する権利について記載されている
権利部は所有権に関して記載されている甲区と、抵当権や地上権など、その他の権利について記載されている乙区に分かれています。甲区では所有者の履歴が、乙区ではその不動産に対して誰がどのような抵当権や地上権などを持っているのかが登記されています。

甲区の場合には、原則では最後の順位(登記の日付が一番新しい)の所有者が現在の所有者ですが、複数人が共有する場合には、それぞれの持ち分の最後の所有者を特定する必要があります。稀ですが、差押など権利を制限されている登記が入ってくる場合もあります。
見本の場合には、法務五郎さんは令和1年5月7日現在の所有者です。甲野太郎さんはこの不動産に対して現在は権利を持っていません。
乙区の場合には、抵当権などの権利が無効になれば下線を引かれますので、下線の部分は見なくても結構です。見本のように、下線がなければ有効の登記です。
抵当権設定の例で見てみると、いつから、何の原因で、どれぐらいの債権があることが分かります。銀行ローンの場合には、抵当権者の欄には銀行とその支店名が記載されています。一部の住宅ローンでは保証会社やほかの金融会社が貸し出しや保証を行いますが、その場合、その会社が抵当権者となります。相続不動産の場合には、まず抵当権者に速やかに連絡し、抵当権に関する借入の情報を確認する方が無難です。
抵当権を設定したときに複数の不動産(例えば土地+戸建て家屋)を担保としていた場合、その目録の番号が記載されます。見本の場合は、土地のほか、建物も担保となっているため、共同担保目録が作成されます。
「共同担保目録」は担保とした複数の不動産が記載されている
権利部(乙区)に表示されている抵当権等について、担保用の不動産が2個以上ある場合には、共同担保目録に記載されます。住宅ローンを利用して一戸建てを購入する場合、土地と建物をまとめて担保にするのが一般的です。

共同担保目録の不動産リストを参考することで、相続財産になる不動産の見落とし防止にもつながります。
「不動産番号」を見つけよう
不動産登記簿謄本の右上(マンションの場合には「専有部分の建物の表示」の右)には、必ず13桁の不動産番号が表示されます。それは国が不動産ごとに付けた、全国すべての不動産を管理するための番号です。
本サイトを通じて不動産の相続登記申請書を作成する場合には、この「不動産番号」を入力する必要がありますので、ご確認ください。
うまくいかなかったら……?
不動産登記簿謄本では、国に登記された権利の情報しかのせていません。そのため、以前より相続があったが、登記されないまま放置されたことや、見覚えがない差押や抵当権が出てくる場合があります。こうした場合には登記のために必要な手続きなどが複雑となり、本サイトのみでは不動産の相続登記が済ませない場合がありますので、必ず専門家とご相談ください。
それ以外は、やはり手続きの面倒を感じた方はいらっしゃると思います。手間がかかり、複雑な相続手続きは必ず専門家にご相談ください。